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海原の国を追い出されてしまったスサノオノミコトはそれならば、と
「アマテラスオオミカミに申し上げて、黄泉の国へ行こう」
と言って山や川に大荒れの嵐を起こしながら、そして国中を揺れ動かしながら、天に昇りました。
そのあまりのことに驚いたアマテラスオオミカミは、
「私の弟が天に昇ってくるということは、きっと良いことではなく、私の国を奪おうと思ってやってきたのでは」
と言いました。
そして髪をほどくと左右の耳のところに輪を巻き、その輪にも、鬘にも、沢山の勾玉が付いている玉の緒を巻き付け、男性の髪型を作りました。
更には背中に千本もの矢が入る筒を、腰には五百本もの矢が入る筒を、腕には威勢良く音が出る鞆をつけて、弓を振り立てながら、淡雪を蹴散らすかのように大地を、庭を力強く踏みつけて、男らしい威勢の良い声で叫びながら、スサノオノミコトを待ち受け、そして問いました。
「お前は何をしにここへやってきたのか！」
「私は何もやましい心はありません。お父さんが泣きわめく理由を聞かれたので、私はお母さんの居る黄泉の国へ行きたいのだと答えたのです。
するとお父さんはこの国に居てはならない、と仰って、私は追い出されてしまったのです。
ですからこれから黄泉の国へ行くことを姉さんに伝えておこうとやってきただけで、謀反の心などありません。」
「ではどうやってその心の清らかさを証明するのか？」
「神々に誓約を立てて、女の子を生みましょう」
そうスサノオノミコトが言うと、天の安河を間に挟んで、アマテラスオオミカミはスサノオノミコトが持っていた長い剣を三つに折り、神聖な井戸水で清めて、噛んで吐き捨てました。
すると吐き捨てた時に出た霧の吐息からタキリベミノミコト(多紀理売命)、イチキシマヒメノミコト(市寸島比売命)、そして最後にタキツヒメ(多岐都比売命)の三柱の女の神様が現れました。
続いてスサノオノミコトがお願いして、アマテラスオオイカミが左の髪に巻いていた勾玉のついた玉の緒を同じように神聖な井戸水で清めて、噛んで吐き捨てました。
そのまま右の髪に巻いていた玉の緒、鬘、左手、右手に巻いていたものも同じように清めて吐き捨てました。
するとマサカアカツカチハヤヒアメノオシホミミノミコト(正勝吾勝勝速日天忍穂耳命)、アメノホヒノミコト(天菩卑命)、アマツヒコネノミコト(天津日子根命)、イクツヒコネノミコト(活津日子根命)、クマノクスビノミコト(熊野久須命)の五柱の男の神様が現れました。
アマテラスオオミカミは、
「後から生まれた五柱の男の子は私が身に着けていた玉の緒から生まれた子ですから、私の子です。
先に生まれた三柱の女の子はあなたが身に着けていたものから生まれた子ですから、あなたの子です。」
と言い、生まれた神々をそれぞれに分けました。