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女の子を生んだスサノオノミコトは
「私の心が清らかだったからこそ女の子が生まれたのです。私の勝ちですね。」
と勝った勢いに乗り、アマテラスオオミカミの作った田んぼの畔を踏みつぶすばかりか溝を埋め、神殿には糞をまき散らすという乱暴を働きました。
しかしアマテラスオオミカミは
「糞のようなものはお酒に酔っていて戻してしまっただけでしょう。
田んぼの畔や溝を壊したり埋めたのには、土地を再生させようとした気遣いからでしょう。
私の可愛い弟がやったことですから。」
と叱るどころかかばう様に言いました。
ですがスサノオノミコトの乱暴はそれにとどまらず、ついには大きな事件を起こしてしまいます。
というのも、ある日アマテラスオオミカミが機織り場で機織りの娘に神様の着物を織らせているところに、スサノオノミコトがやってきて、斑模様の馬の皮を剥いだかと思うとその死体を機織り場の天井に穴をあけて投げ入れてしまいました。
するとその場にいた機織りの娘はそれに驚いてしまい、機織りの横糸を通す道具板で女陰をついて死んでしまったのです。
流石にあまりにもな事態にアマテラスオオミカミも怖くなってしまい、ついには天の岩戸に隠れ、閉じこもってしまいました。
しかし天の神様であるアマテラスオオミカミが閉じこもってしまったせいで、高天原は真っ暗になってしまい、葦原の中国、つまりは地上までもが闇に包まれつつあり、永遠の夜と言って良い日々が始まりました。
そのせいで多くの神々が騒ぎ出し、声は次第に増していき、ありとあらゆる禍が起こり出してしまいました。
これはいけないと高天原の安の河原に八百万の神様達が集まってタカミムスビノカミ(高御産巣日の神)の子と、オモイカネノカミ(思金の神)に考えさせてから、不死鳥であるナガナキドリ(長鳴鳥)を集めて鳴かせ、その次にアマツマラ(天津麻羅)という鍛冶屋に安の河原の川上にあった大きな岩と天の金山から採れた鉄を洗練させ、イシコリドメノミコトに銘じて鏡を作らせました。
また、それだけではなく、タマノオヤノミコトに命じて五百もの勾玉を貫いた玉の緒の飾りも作らせました。
さらにはアメノコヤネノミコト(天児屋命)とフトダマノミコト(太刀玉命)を呼んで牡鹿の肩の骨と樺の木を焼いて占いもしました。
そして出たお告げによって天の香久山から五百本以上もの賢木を抜いては玉の緒を飾りつけ、中には八咫鏡を取りつけ、枝の下の方には御幣を垂らしました。
フトダマノミコトは準備した様々なものをお供えし、アメノコヤネノミコトと祝詞を唱え、その傍らではタジカラオノミコト(手力男命)が天の岩戸のわきに隠れて備えていました。
そしてアメノウズメノミコト(天宇受売命)は天の香具山のヒカゲノカズラをたすき掛け、ツルマサキを頭にかぶり、天の岩戸の前で踊り出しました。
踊りは徐々にヒートアップして行き、着物を乱して踊る様に見ていた神様達はどっと沸き上がり、大声で笑いだしました。
すると閉じこもっていたアマテラスオオミカミは何事かと不思議に思って岩戸を少し開いて様子を覗きに出て尋ねました。
「私が閉じこもってから高天原も葦原の中つ国も真っ暗になってしまったはずなのに、どうしてアメノウズメノミコトが踊っていてしかも皆で楽しく笑っているのか」
「なぜならあなた以上の尊い神様がいらっしゃるので私たちは皆で笑って楽しんでいたのです。」
とアメノウズメノミコトは答えました。
そして鏡を差し出してみせるとそこに姿がちらりと映り、更に気になったアマテラスオオミカミが一歩踏み出すと隠れていたタジカラオノミコトが手を掴んで岩戸の中から引っ張り出しました。
その隙にフトダマノミコトがしめ縄で天の岩戸の入り口を引き渡してして、
「もう岩戸の中へ戻ることはできませんよ」
と申し上げたのでした。
こうやってやっとのことでアマテラスオオミカミが天の岩戸から出てきたので、高天原も葦原の中つ国もすっかり元通り明るくなりました。
しかし今回の一件を引き起こしたスサノオノミコトには罰として貢物を出させ、髭を切り、手足の爪を抜いてしまい、高天原から追放してしまいました。