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さて、ある時ニニギノミコトは笠沙の岬でとても美しい女の人に出会いました。
「あなたは誰ですか？」
と尋ねると、
「私はオオヤマツミノカミ(大山津見神)の娘のコノハナノサクヤヒメ(木花之咲夜比売)です。」
と答えました。
「兄弟はいますか？」
「イワナガヒメ(石長比売)という姉がいます。」
「あなたと結婚したいと思うのですが、どうですか？」
「私からはお答えできません。私の父、オオヤマツミノカミが答えましょう。」
そうコノハナサクヤヒメが言うので、ニニギノミコトは彼女の父、オオヤマツミノカミの元へ使者を遣わせて、結婚をお願いすると、彼は大喜びし、姉のイワナガヒメも一緒に嫁にもらってほしいと言って、沢山の献上を持たせて奉りました。
しかし妹のコノハナサクヤヒメに対して姉のイワナガヒメはとても醜く、ニニギノミコトは困って実家へ送り返してしまいました。
結局、コノハナサクヤヒメだけを残してその夜結婚してしまったのです。
イワナガヒメを返されたオオヤマツミノカミは大変恥ずかしく思い、使者にこういった伝言を託しました。
「私が娘を二人一緒にさし上げたのは、イワナガヒメが妃となれば天の御子様のお命は頑丈に、永遠に不滅となるでしょう。
また、コノハナサクヤヒメが妃となれば美しい花が咲くように栄える様にとの願いを込めてのことです。
しかしイワナガヒメだけを送り返し、コノハナサクヤヒメだけを留まらせたので、天の御子さまのお命は木の花の寿命の様になってしまうでしょう。」
そういったわけで、今でも天皇のお命は長くなく、寿命があるのです。
さて、その後妊娠したコノハナサクヤヒメは、
「私は赤ちゃんを身ごもったようです。
もうすぐ産まれそうなのですが、これは天の神子様の子供ですから黙って産むことはできません。
一体どうしたら良いでしょう？」
と尋ねました。
それに対してニニギノミコトは、
「サクヤヒメ、たった一晩で身ごもる様なことはあるだろうか？
多分私の子ではなく、国つ神の子ではないか？」
こう言って疑いの目を向けました。
それにショックを受けたコノハナサクヤヒメはとても悲しみ、
「もし私のお腹にいる子が国つ神の子であれば産む時に苦痛を感じるでしょうが、あなたの子であればそれはないでしょう。」
と言って、出産をするための家の中へ入り、出入口を全て土で塗り塞いだ上で、なんと家に火をつけました。
そして燃え盛る炎の中で三人の子供、ホデリノミコト(火照命)、ホスセリノミコト(火須勢理命)、ホオリノミコト(火遠理命)を産みました。